有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年2月号がオンライン公開されています。
気づけば2025年も1ヶ月半経っていることに驚愕しています。。。もうすぐ日本化学会春季年会ですね!
今月号のキーワードは、「C–H結合変換反応・脱炭酸・ベンゾジアゼピン系医薬品・ベンザイン・超分子ポリマー」です。
今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。
巻頭言:有機合成化学の今昔
今月号の巻頭言は、東北大学大学院理学研究科 上田 実 教授による寄稿記事です。頷きすぎて首が取れるかと思いました。有機化学を研究している身として、最近で一番刺さった記事です。
オープンアクセスですので、ぜひご覧ください。
配位子設計による選択的・効率的な炭素–水素結合変換反応の開発
「遠くを制してメタ位で反応させる」
C-H 官能基化におけるサイト選択性を触媒で制御することは、この分野に残された最重要課題です。著者らは、これまでになかった「遠隔位立体制御」を利用する斬新な配位子設計によって、従来法では難しかったアレーンC-Hホウ素化のメタ位選択性制御を達成しました。
カルボキシ基の脱炭酸を伴う官能基変換反応
β-ケトカルボン酸の脱炭酸反応が1~3級アミンの添加により劇的に加速されることをご存知でしょうか。本総合論文は、様々なアミン触媒を利用し、β-ケトカルボン酸の脱炭酸的な官能基化により様々な置換基を導入する方法論がまとめられています。ぜひご一読を。
軸不斉を利用したベンゾジアゼピン系医薬品の活性コンホメーションの解明
本総合論文では、ベンゾジアゼピン系医薬品の軸不斉が生物活性に与える影響について詳しく解明しています。GABAA受容体との結合におけるエナンチオマーの役割を明らかにし、医薬品の効力を高めるための新たな視点を提供しています。軸不斉の存在が医薬品の設計に対してどのように寄与するのかを知りたい研究者にとって、必読の内容です。
超分子ポリマーの界面設計による高次構造制御と機能化
分子間相互作用により繰り返しユニットが連結した超分子ポリマーの化学における界面の特性と重要性を概観し、界面の設計と機能化に基づいたユニークな物性や高次構造形成、界面の応用研究について概説されており、界面への理解が深まる総説です。
ベンザインの分子内反応を拡張するプラットフォーム分子を活用した新奇反応開発
著者が開発した新規ベンザインプラットフォームを基軸とした数々の反応展開は圧巻であり、分子内反応を巧みに利用した反応点制御による高度な骨格構築の事例は、その有用性を十分に示しています。さらに、得られた生成物に対してDFT計算による解析や実験的手法による検証が行われており、高度な反応理解が実現されています。このように、一連の研究は完成度が高く、総合論文として非常に読み応えのあるものとなっています。ぜひご一読ください。
Review de Debut
今月号のReview de Debutは1件です。オープンアクセスですのでぜひ!
・ビシクロブタン骨格の開裂を起点とする高効率アザビシクロ[3.1.1]ヘプタン合成(九州大学大学院薬学研究院)田上拓磨
感動の瞬間:驚きと感動に満ちた天然物の全合成
今月号の感動の瞬間は、早稲田大学理工学術院 中田雅久 教授による寄稿記事です。全合成のドラマを存分に感じる記事となっております。ぜひご覧ください。
これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。